いりこだしとかつおだし・あごだしの違い
いりこやかつおでだしを取る人も多いでしょう。いりこだしと鰹だしの違いはどんな点にあるのかについて紹介します。それぞれに特徴がありますので、知っておくことがおすすめです。
いりこだしとは?煮干しと同じ?
いりこだしとは、海産物のカタクチイワシを乾燥させたいりこを煮出して取るだしです。濃厚な風味と強い香りが特徴です。
いりこと煮干しは、基本的には同じもので、カタクチイワシなどの小魚を煮てから乾燥させたものです。
「いりこ」は主に西日本で使われる呼び名で、「煮干し」は東日本でよく使われます。
どちらもだしを取るために使われ、いりこだし・煮干しだしとして親しまれています。名称の違いはありますが、用途や製法に大きな差はなく、地域による呼び方の違いといえます。
いりこだしのうま味成分は、イノシン酸です。煮干しだしは、かつおだしと比べた場合、酸味が強くなく、香りがあって濃厚な風味のだしが特徴です。そのため、「おでん」「煮物」「みそ汁」「麺類のつゆ」など、味が濃い料理に向いています。
いりこだしを取る場合は、いりこをそのまま使ったり、頭と腹わたを除いて苦味を抑えたりする方法があります。地方や料理によってだしの取り方を工夫して料理が作られています。
かつおだしとは?
鰹だしのうま味成分もいりこだしと同じで、イノシン酸が豊富なことが特徴です。鰹だしは、カツオの身をおろして、煮詰めて作った鰹ぶしから作ります。鰹ぶしの製作過程では、カビを付けることで、乾燥を防ぎ、微生物の働きを促進し、発酵・熟成を促します。そのため、鰹ぶし独特の香り、うまみ成分があるのが特徴です。
かつおだしを使った料理としては、だしのうまみを活かした「すまし汁」や「茶碗蒸し」「麺類のつゆ」などがおすすめです。
また、かつおだしを取る際は、鍋に鰹節を入れる際はあまりかき混ぜずに、えぐみが出ないようにするのがコツです。だしをこす時にはかつお節を絞らないようにもしてください。
あごだしとは?
あごだしは、トビウオを焼いてから乾燥させただし素材で、上品で香ばしい香りとすっきりとした味わいが特徴です。クセが少なく、透明感のある旨味が楽しめるため、料亭や和食店などでも重宝されています。吸い物や茶碗蒸し、うどんのつゆなど、素材の風味を活かしたい料理に最適です。
いりこだしの取り方|香り高く旨味を引き出す基本手順
いりこだしは、家庭料理から業務用まで幅広く使われる旨味の強いだしの一つです。正しい取り方を知ることで、雑味を抑えつつ、いりこの持つ深い風味を最大限に引き出せます。
この章では、基本のいりこだしの取り方から、プロ向けのポイントまで丁寧にご紹介します。だしの品質は、料理全体の味わいに大きく影響するため、ぜひ確認しておきましょう。
基本のいりこだしの取り方(水出し・煮出し)
いりこだしの取り方には、「水出し」と「煮出し」の2通りがあります。水出しは、いりこを水に一晩浸ける方法で、まろやかで澄んだ味わいに仕上がります。煮出しは短時間でだしが取れる反面、強火で煮すぎると雑味が出やすくなります。
用途や時間に合わせて使い分けることで、料理に適しただしを取ることができます。
水出し:いりこを水に入れて冷蔵庫で一晩(6〜8時間)おく
→ 雑味が少なく、澄んだ味わいに仕上がる
煮出し:水といりこを鍋に入れて中火で加熱。沸騰直前で火を止める
→ 時短でき、風味が強く出やすいが、強火や長時間加熱は雑味の原因に
いりこの下処理がだしの味を左右する理由
いりこだしの風味は、いりこの下処理によって大きく変わります。特に、頭や内臓を取り除くことで、えぐみや苦味を抑えることができ、上品なだしに仕上がります。
逆に取り除かずに使うと、いりこの旨味が強く出るため、濃厚な味が好まれる料理に向いています。
目的に応じて下処理の有無を使い分けましょう。
雑味を抑えて旨味を引き出すコツとは?
雑味を抑えながら旨味を最大限に引き出すには、煮出しの温度と時間が重要です。
いりこを水に入れてから中火でゆっくり加熱し、沸騰直前で火を止めるのがポイントです。
また、昆布や鰹節と合わせると、相乗効果でだしの深みが増します。いりこの分量も控えめにし、素材の持ち味を生かす工夫が求められます。

いりこだしと相性の良い料理
いりこだしは、加熱しても風味が落ちにくいのが特徴のため、煮込み料理、根菜などの煮物料理と相性が良くておすすめです。
醤油や味噌で煮込んでも、いりこだしの風味は負けません。味にコクが出ておすすめです。
おでん
おでんは、長く煮ることで味がしみ込んで美味しさが増します。そのため、煮込んでもだしのうまみが活きるいりこだしと相性が良くなっています。
いりこだしの風味とうまみが活きたおでんを作ることができておすすめです。
いりこだしでのおでんの作り方は、鍋に水といりこを入れて火にかけ、沸騰後、数分で色がついたらいりこを取り出します。あまり長く煮ないことがコツです。みりんと醤油を入れておでんのだしを作ります。おでんの具材を入れて、中火から弱火で具材にだしが浸みるまで煮込めば完成です。

芋の煮ころがし
根菜の野菜をじっくり煮る際にも、いりこだしはおすすめです。味わい深いいりこだしの煮物ができます。
芋の煮ころがしの作り方は、皮つきのままじゃがいもを電子レンジなどでやわらかくなるまで加熱し、鍋にサラダ油を入れて炒めます。いりこだし、砂糖、酒、みりん、味噌、醤油、水を入れて弱火で煮汁がなくなるまで煮詰めます。
醤油や味噌の濃い味付けになりますが、いりこのだしの香りやうまみが感じられておすすめ料理です。
いりこだしのその他の活用法
いりこだしは、ラーメンスープや鍋料理のベースとして最適です。特に魚介系スープを得意とする飲食店では、濃厚なだし風味が加わることで、料理全体のクオリティが向上します。
また、焼き鳥のタレやしゃぶしゃぶのつけだれのベースとしても、いりこだしは活躍します。たとえば、甘味を加えれば焼き鳥の照り焼き風タレに、酸味を加えればしゃぶしゃぶのポン酢代わりに応用できます。
かつおだしと相性の良い料理
次に、かつおだしと相性の良い料理ですが、だしの味を楽しむ料理がおすすめです。シンプルにだしの味が味わえる茶碗蒸しや麺類のつゆは、かつお節の香りが楽しめていいメニューです。
茶碗蒸し
茶碗蒸しはだしが決め手ですので、だし作りを大事にするといいでしょう。
茶碗蒸しには、かつおだしの一番だしを使うのがおすすめの方法です。茶碗蒸し2人分で、卵1個に対して、だし200cc、酒5cc、塩0.5cc、薄口醤油1cc等を使うのがおすすめです。
だしに酒、塩、醤油を入れてあらかじめ冷ましておき、よく溶きほぐした卵に加え、よく混ぜます。その後、きれいにこします。器に卵液を注いで表面の泡を取り除いて蒸していきます。強火で2分、中火で10分蒸すと茶碗蒸しが出来上がります。

麺類のつゆ
麺類のつゆにもかつおだしを使う場合が多くあります。だしの風味を味わいながら、うどんやそばなどが食べられておすすめです。
かけうどんを作る際には、鍋に水1カップ(200ml) とかつおだし大さじ1(醤油大さじ1/2、みりん小さじ1、砂糖小さじ1/3、塩少々で味付けした)を加えて沸かし、別の鍋で茹でたうどんを一緒に盛り付ければ出来上がりです。
関西風、関東風のつゆがあり、だしと醤油のバランスも異なりますので、麺とだし、醤油の相性がいいつゆを作ってみるといいでしょう。
かつおだしのその他の活用法
また鍋料理では、かつおだしの旨味が素材の風味を引き立てます。すき焼き、しゃぶしゃぶ、寄せ鍋など、幅広い鍋メニューに対応できます。
かつおだしは洋風料理にも活用できます。クリームスープやコンソメスープに加えると、隠し味として深みが増します。また、トマトベースのパスタソースに使用することで、和洋折衷の新しい味を楽しむことができます。
味噌汁に使うだしは「いりこ」か「かつお」か?風味と使い分けのポイント
味噌汁を美味しく仕上げるためには、だしの選び方が重要です。中でもよく使われるのが「いりこだし」と「かつおだし」。
どちらも風味豊かですが、味わいや相性の良い具材が異なります。
ここでは、それぞれの特徴と味噌汁への適した使い方を比較し、風味を最大限に活かすための選び方をご紹介します。日々の献立や店舗メニュー作りの参考にしてください。
いりこだしの味噌汁はコクと旨味がしっかり
家庭料理でも人気のいりこだしは、味噌汁にもよく使われています。かつおだしとは異なる独特のコクと深みがあり、素材の旨味を引き立てるのが特徴です。
いりこだしで作る味噌汁は、しっかりとした旨味とほのかな苦味があり、じゃがいもやわかめ、大根など具材に負けない味わいを持ちます。
特に中四国・関西地方では定番で、家庭でも業務用でも根強い人気があります。いりこの風味を活かすなら、味噌もやや濃いめが相性抜群です。
かつおだしの味噌汁は香りと上品さが魅力
かつおだしは全国的に使われている万能なだしで、味噌汁にもよく合います。
香り高く、あっさりとした味わいに仕上げたいときにおすすめです。かつおだしで作る味噌汁は、上品でやわらかな風味が特徴です。
豆腐やなめこ、油揚げなど、シンプルな具材と好相性。だしの香りを活かしたい場合は、白味噌や合わせ味噌を使うとより一層風味が際立ちます。

「いりこ・かつお・あご」出汁の違いを徹底比較!味・取り方・おすすめ料理早見表
出汁の種類 | 出汁の取り方 | 味の特徴 | 相性の良い料理 |
---|---|---|---|
いりこ出汁 | 水出しまたは煮出し(頭と腹わたを取り除くと雑味が減る) | 濃厚でコクがあり、少し苦みやえぐみを含む | 味噌汁、煮物、うどん、炊き込みご飯 |
かつお出汁 | 煮出し(熱湯に削り節を入れて数分でこす) | 香りが高く、すっきりした旨味 | 吸い物、茶碗蒸し、だし巻き卵、和風スープ |
あご出汁(飛魚) | 焼いてから煮出す(香ばしさを引き出す) | 上品でまろやか、甘みと深みがある | お吸い物、鍋料理、ラーメンスープ、だし炊きご飯 |
いりこだしとかつおだしを混ぜると、旨味の相乗効果が生まれる
いりこだしは力強いコクと香ばしさ、かつおだしは華やかな香りとすっきりとした後味が特徴です。これらを組み合わせることで、互いの長所を引き立てる“旨味の相乗効果”が生まれ、より深く、バランスの取れた味わいに仕上がります。
飲食店においても、料理のグレードを上げるための合わせだしとして活用されるケースが増えており、定番メニューの味に差をつけることが可能です。
いりことかつおの旨味の違いと混ぜるメリット
いりこだしにはイノシン酸とともにカルシウムやミネラルが多く含まれ、どっしりとしたコクのある味わいが特徴です。一方、かつおだしはグルタミン酸とイノシン酸を含み、香りが豊かで後味が軽やかです。
この2つを混ぜることで、味に厚みが出ると同時に、食材の味を引き立てる力もアップします。合わせだしにすることで、単体では出せない奥深い旨味を実現でき、料理全体の満足度を高められます。
飲食店で活躍する!混合だしを使ったおすすめメニュー
いりこだしかつおだしを合わせた混合だしは、飲食店の定番メニューに最適です。
たとえば「かけうどん」では、いりこのコクと、かつおの香りが絶妙に絡み合い、シンプルながら奥深い味に。
さらに「だし巻き卵」では、ふんわりとした食感とともに、だしの風味が口いっぱいに広がります。「味噌汁」や「炊き込みご飯」にもぴったりで、味に深みを加えることでリピーターにつながる味作りが可能になります。
業務用にもおすすめ!だしのブレンドと管理のポイント
飲食店で混合だしを使う際は、ブレンド比率や抽出時間が味に大きく影響します。いりこのクセが出すぎないよう、かつおをやや多めにする比率(例:いりこ3:かつお7)もおすすめです。また、まとめて取っただしは冷蔵または冷凍保存し、鮮度を保つことが大切です。
弊社のようなOEM対応メーカーなら、店舗ごとの味に合わせただしのブレンド提案や、業務用液体だしとしての製品化も可能です。
まとめ
いりこだしと鰹だしの違いについて紹介しました。だしは、何でだしを取るのかによって、香りやうまみが異なります。いりこだしも鰹だしもうまみの成分は同じですが、いりこだしの風味は強いため、長く煮る煮物などに向いています。
また、鰹だしは、だしの風味をより感じたい料理に適しています。それぞれのだしの特徴をしっかりわかった上で、それぞれのだしを使い分けてみるといいでしょう。いりこだし、鰹だしをそれぞれの料理で使い分けられるように、だしをストックしておくこともおすすめです。